中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会、泉南アスベストの会、大阪アスベスト弁護団、アスベスト訴訟弁護団は、アスベスト被害全国ホットラインを行います。当団体からもスタッフが参加します。(相談無料)
[日時] 2016年9月30日(金)、10月1日(土)10時~18時
[相談電話番号] 0120-117-554
1 アスベスト被害国家賠償制度について
2014年10月9日、最高裁は、泉南アスベスト国家賠償訴訟(第1陣、第2陣)について、国の責任を認める判決を下しました。泉南アスベスト訴訟は、大阪府泉南地域のアスベスト工場の元労働者やその遺族が、アスベストによる健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったためであるとして、国家賠償を求めた事件です。
最高裁は、「労働大臣は、1958年5月26日には、旧労基法に基づく省令制定権限を行使して、罰則をもって石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり、旧特化則が制定された1971年4月28日まで、労働大臣が旧労基法に基づく省令制定権限を行使しなかったことは、旧労基法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法である」とした上、被害者の被った損害の2分の1を限度として国の責任を認めました。
厚生労働省は、この判決を受けて、判決で認められた国の責任期間内(1958年5月26日~1971年4月28日)に、局所排気装置を設置すべき石綿工場で働いて、石綿関連疾患に罹患した労働者やその遺族に対し、訴訟上の和解手続きにより損害賠償を行うことを表明しました。
これまでに、さいたま、東京、岐阜、大阪、神戸、奈良、高松、鹿児島の各地方裁判所でアスベスト被害国賠訴訟が提訴されています。
2 国(厚生労働省)の和解要件について
国は、次のような要件が満たされれば、訴訟上の和解により一定金額の損害賠償を行うことを表明しています。
① 昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。
※労災保険や石綿健康被害救済法による給付を受けている方であっても、上記期間内に労働者として石綿粉じんにばく露する作業に従事した方は対象となります。
② その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。
※「石綿による一定の健康被害」とは、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などをいいます。
③ 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。
以上が国の和解要件ですが、注意点があります。
まず、①の石綿粉じんばく露作業については、被害者がアスベスト製品の製造をしていた場合だけでなく、石綿粉じんの発生・飛散している工場内へ立ち入る作業(荷役での立ち入り、点検や修繕、打合せ等のための立ち入り)も該当する可能性があります。
次に、②健康被害については、労災の対象になっている石綿関連疾病(中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水)のうち石綿肺には注意が必要です。労災認定されるのは、じん肺管理区分が管理2、管理3イ、管理3ロでじん肺法上の法定合併症(肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気胸、続発性気管支拡張症、肺がん)を発症しているか、じん肺管理区分が管理4とされたものです。しかし、国賠訴訟では、労災認定されない管理2、管理3イ、管理3ロも含まれます。
最後に、③の請求期間については、死亡から20年を経過すると、損害賠償請求権が消滅します(除斥期間。民法724条後段)。
⇒岐阜地裁へのアスベスト被害国賠訴訟提訴の新聞記事